魚編に虎と書いて鯱と読む!!

名古屋で読書会サークルを主催しています。読書の話を中心に徒然と書きます。グランパスが大好き。本職は公認情報システム監査人やってます。

マルグリット・デュラス「愛人」

「植民地の白人社会の最下層」という設定が全て。登場人物全員が闇を抱えていて、まっとうな人物が一人もいない。誰にも感情移入できないというか、遠くにいる人たちを、ただ遠くから眺めている感じ。
ところどころエピソードが入れ替わったりするけれど、老女(?)の回想と捉えるべきか。時間軸より関係軸を優先して構成されている。また指示代名詞の多用は、あえて読者を混乱させようとしてるのかもしれない。
なんとなくだけど、桃井かおりの声で朗読されているイメージで読むと雰囲気が出る。セピア色の思い出みたいな。

 

 

「太平記」

平家物語よりも軍記物としてはドロドロしていて、血生臭いけど、そこに人間の欲望を感じ取ることができる。


まさかのオカルト展開が混じっていて、困惑しつつも、悪霊や鬼の存在が信じられている時代なので、書いた人からすると当然のことかもしれない。


太平記については、やっぱり北方謙三南北朝シリーズと合わせて読むのが一番!漢たちの熱い生き様が心の奥深いところまに押し寄せてくる。

 

 

 

三島由紀夫「金閣寺」

破滅に向かっていくラスト数ページの緊張感が何とも言えない。なぜ自ら人生に終結を向かえようとするのか。(実際には死なないけど)


正直、三島由紀夫の『美』感覚について語れと言われると辛いけど、なにか永遠であってはならない、という気がした。


だからこそ、破滅を選ぶのだろうか? 読んでて、胸の詰まる思いだった。

 

金閣寺 (新潮文庫)

金閣寺 (新潮文庫)

 

 

 

「謡曲・狂言」

能のストーリーは、「平家物語」や「源氏物語」などの古典作品をモチーフとしているため、こう立体的な表現だと、何を伝えたかったのか理解しやすい。これって現代でいうと、人気小説のドラマ化みたいなものか?
織田信長が愛した「敦盛」も、背景(平家物語の一節)を知ると、印象がガラッと変わる。苦しみから解放される敦盛の姿など。

 

 

 

「西行 魂の旅路」

出家したのに未練タラタラな歌も多くて、どこか人間臭い人だったんだなあ。
吉野の桜の歌は読んでるだけでも、その情景が伝わってきて、色合いも桜色と雪の白色がマッチして美しく感じる。

 

吉野山 桜が枝に 雪散りて 花遅げなる 年にもあるかな』

 

 

 

 

池澤夏樹「南の島のティオ」

河出書房の文学全集シリーズでお馴染み池澤夏樹の作品。大人も読むことのできる児童文学。
不思議の島の不思議だけど、ちょっと心に染みる短編集。海(故郷?)に帰っていく日本軍兵士たちの話なんかもそうだけど、戦争の爪痕が所々で登場するけど、重苦しさは感じられない。むしろ何かが浄化されていく感じ。

 

南の島のティオ (文春文庫)

南の島のティオ (文春文庫)

 

 

 

「伊勢物語」

色好み、今でいえばプレーボーイとかスケコマシの鑑かと思ったのは、恋心を抱かない相手にも優しくできる姿。等しく心を砕くって、なかなか出来ないけど、だからこそ、そんな「男」がモテるのね。
そんな彼でも藤原高子との逃避行失敗は辛い思い出なんだろう。自分が心から愛した女性と、すんでのところで引き離されるなんて、とても耐え切れない。
訳者(川上弘美)のあとがきではないが、たった31音に恋愛のアレコレを詰め込むって本当に素晴らしいし、それこそが和歌の魅力なのかも。