魚編に虎と書いて鯱と読む!!

名古屋で読書会サークルを主催しています。読書の話を中心に徒然と書きます。グランパスが大好き。本職は公認情報システム監査人やってます。

北方謙三「三国志(五)」

また一人、地味ではあるけど、恩人のためなら、命を捨てることも躊躇わない漢、伊籍が登場。彼もまた武人ではないといえ、その心意気はまさしく武士。そんな伊籍が張飛とお互いを認め合うというのも理解できる。
張飛といえば、この巻では、『運命の人』董香と出逢い、所帯を持つことになるが、これが実に微笑ましい。招揺を巡っての一幕は、読んでるこっちが気恥ずかしくなる。天下の豪傑とは思えぬ純情さ。

 

三国志 (5の巻) (ハルキ文庫―時代小説文庫)

三国志 (5の巻) (ハルキ文庫―時代小説文庫)

 

 

 

北方謙三「三国志(四)」

まだまだ耐える季節の続く劉備陣営。そんな中、癒し系マスコットの王安が登場。そんな王安を厳しく鍛えながらも、父親のような優しさ(?)で見守る張飛乱暴者のイメージが強い張飛だけど、北方三国志では強さだけでなく、優しさを兼ね備えた、そんなハードボイルド色が、最も強い。
一方、北ではキング・オブ・噛ませ犬こと袁紹が、曹操と激突。本人も噛ませ犬なら、息子や重臣たちも才能の無駄遣いというか、なんというか。攻城部隊の裏切りが象徴的。

 

三国志〈4の巻〉列肆の星 (ハルキ文庫―時代小説文庫)

三国志〈4の巻〉列肆の星 (ハルキ文庫―時代小説文庫)

 

 

 

北方謙三「三国志(三)」

ライバルたちが着々と勢力を伸ばす中、焦ったくも、秋(とき)が来るのを待つしかない劉備陣営。よりによって、曹操に頼らざるを得ない心中は読んでるこっちも辛くなる。
その一方で、稀代の豪傑、呂布が散る。曹操劉備と違い、生涯一軍人としか生きられなかった漢に相応しい最期だったのかもしれない。海に向かって咆哮する赤兎の姿が象徴的。

 

三国志〈3の巻〉玄戈の星 (ハルキ文庫―時代小説文庫)

三国志〈3の巻〉玄戈の星 (ハルキ文庫―時代小説文庫)

 

 

 

北方謙三「三国志(二)」

実は、この巻の主役は糜竺ではないかと思う。
他の作品から入った人からしたら、誰それ、とか、地味とか言われるけど、徐州時代から劉備に付き従い、荊州益州まで閣僚の実質トップとして活躍した政治家。同じく徐州時代からの古株、孫乾と合わせて、もっと評価されるべき人物と思う。
初登場では、武士でもないのに命を張って劉備を説得、「商人である前に、この国の人でありますよ、私は」。まさしく、彼もまた、漢の中の漢。
北方謙三作品の素晴らしい点は、こういった歴史上、目立つことのなかった人物にも役割を与えて描いてるとこじゃないかと思う。

 

三国志〈2の巻〉参旗の星 (ハルキ文庫―時代小説文庫)

三国志〈2の巻〉参旗の星 (ハルキ文庫―時代小説文庫)

 

 

 

北方謙三「三国志(一)」

壮大な物語の幕が切って落とされた。冒頭、劉備が「男には、命を捨てても守らなければならないものがある。それが信義だ、と私は思っている」と語る。
うん、今までに読んできた三国志とは全く違う。そう、これはハードボイルドな世界に生きる漢たちのドラマなのだ。
この先の史実は既に知っている。しかし、まだ知らない物語が、ここから始まろうとしている。そんなワクワク感に満ち溢れた、最初の一冊。

 

三国志 (1の巻) (ハルキ文庫―時代小説文庫)

三国志 (1の巻) (ハルキ文庫―時代小説文庫)

 

 

 

「新古今和歌集」

百人一首に採用された和歌が意外と多くて、その分、全般的に親しみやすい。
歌もさることながら、後鳥羽院の情熱というか執念みたいなものを感じる。一旦、和歌集として成立した後に、自分の詠んだ歌を追加したというのも分かる気がする。

奥山の おどろが下も 踏み分けて
道ある世ぞと 人に知らせん
(一六三五 後鳥羽院)

 

新古今和歌集―ビギナーズ・クラシックス (角川ソフィア文庫 88 ビギナーズ・クラシックス)
 

 

 

「今昔物語集」

平安末期に成立した説話集。日本だけでなく、インド、中国の話も含み、当時としてはグローバル色豊か。
仏や神にまつわる話もあると思えば、一方で世俗的な話も多く、例えばライバルを呪い殺す弘法大使だとか、他の作品や史書では絶対に見られない。
そして、芥川龍之介を始めとして、後の世でモチーフにする作家も現れるなど、今の世にも脈々と継がれる作品と感じた。

 

今昔物語集 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)

今昔物語集 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)