魚編に虎と書いて鯱と読む!!

名古屋で読書会サークルを主催しています。読書の話を中心に徒然と書きます。グランパスが大好き。本職は公認情報システム監査人やってます。

読書会

ヴィクトール・E・フランクル「夜と霧」

かつて、人生最悪の時を乗り越えられたのは「自分が、今、何をすべきか」ということに気付いたからではないか。一言で言えば、「志」みたいな。 この世に生を受けたからには、人にはそれぞれの使命が与えられ、己の志をもって果たす。 当時、「夜と霧」は読…

夏目漱石「夢十夜」

結末が報われていない夢が多いのは漱石自身が心を病んでいたからなんだろうか?これらの夢は本当に見た夢なのか?多分、創作なんだろうけど、なんか心の内を明らかにしたような気がする。 文鳥・夢十夜 (新潮文庫) 作者: 夏目漱石 出版社/メーカー: 新潮社 …

田坂広志「いかに生きるか」

正直、最初のうちは独特の文体に何を言いたいのかよく分からなかった。読み進むに連れて著者の意図が分かると、非常に考えさせられる。あの震災を通じて、自分に何ができるのか、よく考え直してみる必要がある。「働く」ことの本当の意味、社会貢献の考え、…

フィリケえつこ「てんぐの てんちゃん ぴよよーん」

「どぼーん」「とことこ」といったオノマトペだけでストーリーが進んでいきます。繰り返される音は、心地よい響き、楽しいリズムとして耳に残ります。絵と音の両方を子供にも楽しんでもらいたいですね! で、ミルミルって何者よ? てんぐのてんちゃん ぴよよ…

鈴木輝一郎「信長と信忠」

偉大なる父・信長にコンプレックスを抱く息子・信忠を想像していたら、見事なまでに予想を裏切られた。嫉妬をしていたのは父・信長だった。母から愛されず、弟に裏切られ、そして最愛の妹まで敵に回した孤独な信長が、才能溢れる優等生タイプの息子に嫉妬す…

岸見一郎・古賀史健「幸せになる勇気」

前作「嫌われる勇気」は、フランクルやカーネギーと共通することがあったけど、今回はフロムの「愛するということ」そのもの。愛は与えられるものではなく、与えるもの。忘れそうになった時でも思い出せるように記録。 世界平和とか大それたことを言う前に、…

司馬遼太郎「王城の護衛者」

幕末において、もっとも勤王思想が強く、孝明天皇への忠誠が厚かった松平容保が瞬く間に逆賊扱いされるのは、まったくもって皮肉としか言いようがない。では、もし自分が容保の立場だったら? 同じ判断をして、同じ結果に終わっていたかも。なんとなく性格似…

「闇ウェブ」

厨二病な感じのタイトルとは反対に、迫りくる脅威。最近のサイバー犯罪者の狙い目は医療機関や保険会社のデータベースってのは納得。どれだけセキュリティに気を配っても完璧な防御などなく、今こうしてる間に、僕らの個人情報も知らない誰かに見られてるん…

高殿円「剣と紅」

大河ドラマ「おんな城主直虎」と同じく、井伊直虎を主人公とした作品。両作品で対照的な点はいくつもあるけど、共通なのは直虎と小野政次の微妙な関係性。そして、敢えて憎まれ役を演じる政次は確かに見ていて切ない。大河の直虎とは異なって、少しクールな…

ヒド・ファン・ヘネヒテン「ちっちゃな おさかな ちゃん」

いつもと趣向を変えて、今回は子ども向け絵本。赤、オレンジ、黄色、緑、青、紫と登場するキャラクターの色彩が鮮やか。ママと離れ離れになってしまったおさかなちゃんの冒険。子を持つ親の立場としては、再会のシーンでウルっときてしまいます。しっかし、…

川端康成「眠れる美女」

初めて読んだのは中学の頃で、当時はケシカランと思う本を読んでしまった背徳感から、最後まで読まないまま図書館に返したのは恥ずかしい思い出。 大人になって読み返すと、また違った感想を持つのも不思議だけど、今は「性」より「生」、いや「死」について…

ジーン・リース「サルガッソーの広い海」

主人公アントワネットこそが、名作「ジェイン・エア」のバーサだったという設定を知らずに読んでいたら、ただの悲しい女の一生を描いた物語、くらいの感想で終わっていた。結局のところ、旧植民地で生まれたが故に、運命に翻弄され、生きる気力も失ってく様…

内村鑑三「代表的日本人」

紹介された5人は揃って、世のため、人のためなら命を投げ捨てる聖人君子のように書かれているが、実際はどうだったのだろう。どことなくキリスト教の殉教者みたいに書かれている気もした。 内村鑑三自身の信じていたキリスト教が堕落していることに対する嘆…

アゴタ・クリストフ「悪童日記」

戦時下を生き抜くためには、ここまで逞しく、また強かでなければならないのだろうか?子供らしくないというより、その姿は「小さな大人」。読み易いのは、余計な感情や感想は書かず、ただ淡々と事実のみを記載したからだろう。 悪童日記 作者: アゴタクリス…

柳田国男「遠野物語」

『山の民』について、もう少し深く触れると思ったら、そうでもなく、不思議なモノに終始してる感じ。けど、日本中で同じような話が伝承されてるんだろうなあ。それには当然、似たり寄ったりの共通点もあって。もっと言えば、世界中に広がってるのかも。 遠野…

新渡戸稲造「武士道」

武士道とは我が国に古来より伝わり、我が国で生まれた唯一無二の民族精神であり、また道徳観念なのではないかと思う。欧米諸国のキリスト教配下による宗教教育との比較は様々な場面で興味深く感じる。 武士道 (岩波文庫 青118-1) 作者: 新渡戸稲造,矢内原忠…

ミルチャ・エリアーデ「マイトレイ」

マイトレイとアランが結ばれるまでの遣り取りが初々しいというか甘酸っぱい初恋の思い出みたいでキュンキュンくる分、後半との落差が切ない。本当に誰も報われない結末。始めのうちはアランを「舞姫」の豊太郎に重ねて読んでたけど、それは失礼。あの優柔不…

「近松門左衛門」

とにかく登場人物を殺しすぎ。一つには、死んで来世での幸せに期待する、ということ。もう一つは主要人物の死が観客の同情を誘うこともあったのだろうけど。とは言っても、原文のリズム感や「間」の取り方は素晴らしい。 近松門左衛門 『曽根崎心中』『けい…

谷崎潤一郎「刺青・秘密」

倒錯的な作品を読んで「キモっ!」と思う自分はMではない、と言い切ろうと思ったけど果たして、そうなのだろうか?突き詰めて考えてみると、人は誰しもSにもMにもなれる要素を身につけてるのではないだろうか?たまたま、今までの環境ぬ作用されていただけで…

北方謙三「破軍の星」

二十一歳の若さで散っていった北畠顕家の閃光のような生涯。それでいて洗練され、かつ力強さも感じる。敗れていくことが分かっていても、己の信念、そして夢へ向かっていく顕家の姿には心が熱く奮える。夢、誇り、志とは何であるか、人が生きていく上で大切…

紫式部「紫式部日記」

鬱屈した書き出しは、イメージした紫式部とは程遠く、意外と謙虚というか、しおらしいと思ったのだけど、、、「三才女批評」を読んで納得。このイメージだ(笑)。ただ清少納言に対しては、政治色を感じるというか、道長派としての姿を感じる。 紫式部日記 ビ…

魯迅「故郷/阿Q正伝」

阿Q正伝を数年振りに読んだけど、最後、こんな終わり方だったかなと疑ってしまうくらい、後味が悪かった。 反対に、故郷のラストフレーズは何度読んでも、本当に素敵な文章だと思う。 - 希望とは本来あるとも言えないし、ないとも言えない。これはちょうど…

P.F.ドラッカー「プロフェッショナルの条件」

まずは成果を期待しえなくなった不要なものを如何にして切り捨て、過去と訣別するか。 そして、次に自分の「強み」を見つけねば。 ただし、自分の強みを活かすことも大切だけど、上司の強みを活かすことも大切。 今の組織の中で何ができるのか、そんなことも…

恩田陸「蜜蜂と遠雷」

かつて天才少女と呼ばれながらも姿を消した女子大生(ただし、天然)、その天才少女との出逢いが才能を開花させた王子様キャラの幼馴染(ただし、天然)、規格外のファンタジスタ(ただし、天然)の3人。 それぞれの才能に刺激を受け、コンクール中も進化し続ける…

三島由紀夫「潮騒」

三島のクセに、爽やか青春物語じゃないか!金閣寺と打って変わって、清々しくもあり引き込まれて、一気に読み終えた。無口で不器用、でもマジメで純情な主人公。ラストは想い人と結ばれるハッピーエンド。正直というか誠実こそ報われる。 とにかく、蜂さんG…

岡倉天心「茶の本」

天心が訴えたかったのは、単に「お茶」が素晴らしいということではなく、「他者との共生」「自然との共生」であるということ。でも、エコロジーの先取りというのは言い過ぎでは?それはさて置き、一杯のお茶でも啜ろうではないか。 新訳・茶の本―ビギナーズ…

E.H.カー「歴史とは何か」

「歴史とは何か」というより「歴史家とは何か」。我々が目にする「歴史」をどのようにまとめているかが描かれている気がした。歴史家は、ただ事実を列挙するのではなく、判断を持って取り上げなければならない。 なぜ、人々は歴史が好きなのか、歴史を振り返…

曲亭馬琴「南総里見八犬伝」

これだけ男子の少年心をくすぐる作品は古今東西探しても数少ないだろう。分かりやすいくらい、悪者が痛い目に遭い、正しい者が報われる。単純な構図だけど、疲れてる時には心地よい。しかし、信乃の元・主人公っぷりが哀しい。すべて親兵衛に持ってかれたね…

藤沢周平「蝉しぐれ」

幼な馴染みとの淡い恋、友情、家族に訪れる悲劇、相次ぐ逆境を乗り越え、絶体絶命のピンチの中、かつての想い人を助け、巨悪に一矢を報いる。まさに漢にとって最高に燃えるシチュエーションではないか!一方で一青窈の「かざぐるま」がピッタリくる切ない恋…

三浦知良「やめないよ」

やるべき事を来るべき時のために欠かさず行う。いくつになっても「学ぶ」ことを忘れないからこそ、今の地位を維持できるのであろう。心の弱っている時に読み直すことで、何か勇気をもらった気がする。諦めず、常に上を向いて歩こう! やめないよ (新潮新書) …