魚編に虎と書いて鯱と読む!!

名古屋で読書会サークルを主催しています。読書の話を中心に徒然と書きます。グランパスが大好き。本職は公認情報システム監査人やってます。

歴読! #37 「馬上少年過ぐ」

今回で37回を迎えた歴史読書会「歴読!」。

今月の課題本は司馬遼太郎「馬上少年過ぐ」。独眼竜こと伊達政宗を描いた表題作を始め7つの短編小説が収録されています。

馬上少年過ぐ (新潮文庫)

馬上少年過ぐ (新潮文庫)

 

 どの小説も歴史に埋もれているものの、それでいて「クセ」の強い登場人物が活躍する物語ばかりです。それだけに、参加者の中からも史実を元にした話なのか、まったくのフィクションなのか疑問の挙がった作品もありましたが、この辺りが司馬遼太郎のバランス感覚なのでしょうか。

なお、もっとも人気の高かった作品は『喧嘩草雲』。草雲のキャラが立っていて、話としても単純で分かりやすいからという声が挙がっていました。

また、それぞれの登場人物には味があるのだけれど、才能はあっても活かしきれていない。それなりの能力を持っているけれど、それだけで成功できるとは限らないという厳しい声もありました。

 英雄というのは、時と置きどころを天が誤ると、天災のような害をすることがあるらしい。

 まさに『英雄児』の最後の一行、この言葉に尽きるのではないでしょうか。

参加者の皆様、ありがとうございました。

次回6月定例会の課題本は三谷幸喜清須会議」とします。再来年の大河ドラマが三谷氏脚本の「真田丸」に決まりましたが、一足先に三谷ワールドを味わってみましょう♪

よろしくお願いします! 

 

【ひこのチェックポイント】

・ 英雄というのは、時と置きどころを天が誤ると、天災のような害をすることがあるらしい。(『英雄児』より)

・いずれにせよ、人智洞開せずといわれ、当時まだ血なまぐさい、あずまえびすの土俗を濃厚にのこしていたあたりの風土のなかで既にこういう微妙な政治表現の能力があったということをおもうことは、後世のわれわれにとって、くさむらのなかで白い花をみいだしたようなあざやかさをおぼえる。(『馬上少年過ぐ』より)

・この若者はすでに権力という魔術的な、人をつねに異常にし、異常なことがむしろ勇気とか智謀とかということで賞賛されうる不可思議な世界に身もこころもゆだねている。(『馬上少年過ぐ』より)

・「愚衆というのはつねにそうだ。正義というものが何であるかがわからない。おのおのは愚衆である」(『重庵の転々』より)

・「人の一生には刃物の上を渡ることを一度や二度せねば人がましくなれぬものだ。自分の運を信ずることだ。わしもそれでやってきた」(『貂の皮』より)

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