魚編に虎と書いて鯱と読む!!

名古屋で読書会サークルを主催しています。読書の話を中心に徒然と書きます。グランパスが大好き。本職は公認情報システム監査人やってます。

田坂広志「人は誰もが『多重人格』」

今回の田坂先生はポエムでなく対談形式。難しい専門用語を極力排除しているので読みやすい。
多重人格というか、その場その場で最も適した行動を選択するための判断力を鍛えることが大事。
実は、そんなに目新しい内容が書いてあるわけではないが、何かと参考になる一冊。

 

人は、誰もが「多重人格」 誰も語らなかった「才能開花の技法」 (光文社新書)
 

 

 

ニーチェ「この人を見よ」

マイケル・サンデルに対しても感じたが、日本人と欧米人の道徳観が異なるためか、なぜキリスト教の道徳をニーチェがそこまで批判したかったのかピンとこない。


結局のところ、欧米の道徳観とは宗教(キリスト教)教育の中で教えられていくものであるのに対して、日本には、そんな土壌がなかったからだろうか。


ちなみに「もしニーチェが同じ時代の日本に生まれていたら?」と考えてみたが、ストイックな「武士道」の考え方もニーチェには「ディオニュソス的ではない!」と批判されたのかな…。

 

この人を見よ (光文社古典新訳文庫)

この人を見よ (光文社古典新訳文庫)

 

 

 

マルグリット・デュラス「愛人」

「植民地の白人社会の最下層」という設定が全て。登場人物全員が闇を抱えていて、まっとうな人物が一人もいない。誰にも感情移入できないというか、遠くにいる人たちを、ただ遠くから眺めている感じ。
ところどころエピソードが入れ替わったりするけれど、老女(?)の回想と捉えるべきか。時間軸より関係軸を優先して構成されている。また指示代名詞の多用は、あえて読者を混乱させようとしてるのかもしれない。
なんとなくだけど、桃井かおりの声で朗読されているイメージで読むと雰囲気が出る。セピア色の思い出みたいな。

 

 

「太平記」

平家物語よりも軍記物としてはドロドロしていて、血生臭いけど、そこに人間の欲望を感じ取ることができる。


まさかのオカルト展開が混じっていて、困惑しつつも、悪霊や鬼の存在が信じられている時代なので、書いた人からすると当然のことかもしれない。


太平記については、やっぱり北方謙三南北朝シリーズと合わせて読むのが一番!漢たちの熱い生き様が心の奥深いところまに押し寄せてくる。

 

 

 

三島由紀夫「金閣寺」

破滅に向かっていくラスト数ページの緊張感が何とも言えない。なぜ自ら人生に終結を向かえようとするのか。(実際には死なないけど)


正直、三島由紀夫の『美』感覚について語れと言われると辛いけど、なにか永遠であってはならない、という気がした。


だからこそ、破滅を選ぶのだろうか? 読んでて、胸の詰まる思いだった。

 

金閣寺 (新潮文庫)

金閣寺 (新潮文庫)

 

 

 

「謡曲・狂言」

能のストーリーは、「平家物語」や「源氏物語」などの古典作品をモチーフとしているため、こう立体的な表現だと、何を伝えたかったのか理解しやすい。これって現代でいうと、人気小説のドラマ化みたいなものか?
織田信長が愛した「敦盛」も、背景(平家物語の一節)を知ると、印象がガラッと変わる。苦しみから解放される敦盛の姿など。

 

 

 

「西行 魂の旅路」

出家したのに未練タラタラな歌も多くて、どこか人間臭い人だったんだなあ。
吉野の桜の歌は読んでるだけでも、その情景が伝わってきて、色合いも桜色と雪の白色がマッチして美しく感じる。

 

吉野山 桜が枝に 雪散りて 花遅げなる 年にもあるかな』