魚編に虎と書いて鯱と読む!!

名古屋で読書会サークルを主催しています。読書の話を中心に徒然と書きます。グランパスが大好き。本職は公認情報システム監査人やってます。

2017-07-01から1ヶ月間の記事一覧

森鴎外「舞姫」

主人公の豊太郎がとんでもなくダメな男に見える。実際のところ、コミュ障で仲間を作ることもできずに異国で失職するだけでも残念なのに、今度は恩人でもあるエリスをいとも簡単に裏切ってしまうわけで、挙句の果てには悪いのは自分ではない、って人としてど…

ガルシア・マルケス「百年の孤独」

読み終えて最初に思ったこと。「なんなのだ、これは?」『この一族の最初の者は樹につながれ、最後の者は蟻のむさぼるところとなる』メルキアデスが百年前に予言していた通り、元の落ち着くべき場所に落ち着いた一族。「一方通行」の愛しか知らない一族の物…

スティーブン・ミルハウザー「三つの小さな王国」

3作品ともに言えるのだが、妻を寝取られる夫ばかりで屈辱的だよなあ。これは作者の経験かと思って調べてみたら、本当にそうだった。一番最初が「屋根裏の冒険」で始まってワクワクしてたら、なんか現実に戻されて、しかも暗い話になっていき、最後には皆死ん…

ニーアル・ファーガソン「マネーの進化史」

まさに金融史の教科書。大学で半年かけて学ぶ内容という気がしなくもない。実際、イギリスの大学で用いられているとか。なぜ人類は同じ失敗を繰り返すのか?行動経済学ではないが、どこかで自分だけは絶対失敗しないという自信があるのだろうか。やはり歴史…

宮沢賢治「銀河鉄道の夜」

読んだのは小学校以来だったので、ストーリーを忘れていて、それが却って新鮮だった。カムパネルラはジョバンニに何を託したかったのか?ジョバンニはカムパネルラに何を求めていたのか?上手く言えないけど、生と死の間の絆みたいなものか。賢治独特の世界…

鈴木大拙「禅と日本文化」

安易に手を出すと火傷しそう。儒教や朱子学といった分野に知識があれば、もっと面白かったかも。不完全なものに「美」を見出す日本人の感覚と、何事も白黒つけず曖昧なまま空気を読む国民性も、禅に起因してるのかもしれない。禅はインドや中国よりも、日本…

泉鏡花「春昼・春昼後刻」

泉鏡花の作品の美しさは色彩の艶やかさと幻想的な世界観にあると思う。前者に圧倒され、後者で頭の中がボンヤリとした中で読み進むから、妖かしの世界に足を踏み入れたような気になってしまう。しかし、言い換えると、ストーリーはそんなに大したこともない…

夏目漱石「こころ」

何度読んでも、「私」が「先生」に魅かれていくのか分からない。「先生」は先生をしているわけでもなく、いわゆる高等遊民に過ぎない。どこに魅かれたのか、自分に似ているから?それとも、自分にない何かを持っているから?「私」は狂言回し?「先生」と「…

伊東潤「天地雷動」

長篠の戦いを武田勝頼、徳川家康、羽柴秀吉3者の視点から描くことで、それぞれの立場、戦わざるを得ない理由が鮮明になる。そして、もう一人の主人公といっても良い宮下帯刀の存在が、物語に深みを与えているのではないか。名もなき侍大将の必死に生きる姿は…

吉川英治「平の将門」

平将門というと平安時代にそぐわないクーデターを起こした、荒々しく「武神」のようなイメージが強いけど、この作品ではもっと人間臭く、みんなの「お兄ちゃん」という感じ。周りに流されすぎというか、弟たちの心配もいいけど、自分の心配もしろよ。という…

田坂広志「知性を磨く」

「なぜ、高学歴の人物が、深い知性を感じさせないのか?」というグサッと刺さる言葉から始まった本書だけど、それは知識の量を増やすという教育の中でのエリートだからに過ぎない。本当の知性とは「答えの無い」問いを問い続ける能力であり、一見、そこには…

佐藤賢一「王妃の離婚」

『死人』という言葉には、オーエンや王妃の父(ルイ11世)も含まれているのかと思ったが、そうではなく、ただベリンダのみを指していた。ベリンダ・オーエン姉弟が結び付けたフランソワと王妃の関係性。そして裁判後のそれぞれの人生は決して恥じるものではな…

司馬遼太郎「豊臣家の人々」

豊臣家にとって最大の不幸だったのは、秀吉と寧々の間に子供ができなかったこと。その結果、何人もの平凡な「人々」がどうの、己の身に何が起きてるかも理解できぬまま、運命を翻弄され続けた。まさに「ひとひらの幻影」に踊らされた一族の悲劇である。 『こ…

田坂広志「人は誰もが『多重人格』」

今回の田坂先生はポエムでなく対談形式。難しい専門用語を極力排除しているので読みやすい。多重人格というか、その場その場で最も適した行動を選択するための判断力を鍛えることが大事。実は、そんなに目新しい内容が書いてあるわけではないが、何かと参考…

ニーチェ「この人を見よ」

マイケル・サンデルに対しても感じたが、日本人と欧米人の道徳観が異なるためか、なぜキリスト教の道徳をニーチェがそこまで批判したかったのかピンとこない。 結局のところ、欧米の道徳観とは宗教(キリスト教)教育の中で教えられていくものであるのに対して…

マルグリット・デュラス「愛人」

「植民地の白人社会の最下層」という設定が全て。登場人物全員が闇を抱えていて、まっとうな人物が一人もいない。誰にも感情移入できないというか、遠くにいる人たちを、ただ遠くから眺めている感じ。ところどころエピソードが入れ替わったりするけれど、老…

「太平記」

平家物語よりも軍記物としてはドロドロしていて、血生臭いけど、そこに人間の欲望を感じ取ることができる。 まさかのオカルト展開が混じっていて、困惑しつつも、悪霊や鬼の存在が信じられている時代なので、書いた人からすると当然のことかもしれない。 太…

三島由紀夫「金閣寺」

破滅に向かっていくラスト数ページの緊張感が何とも言えない。なぜ自ら人生に終結を向かえようとするのか。(実際には死なないけど) 正直、三島由紀夫の『美』感覚について語れと言われると辛いけど、なにか永遠であってはならない、という気がした。 だから…

「謡曲・狂言」

能のストーリーは、「平家物語」や「源氏物語」などの古典作品をモチーフとしているため、こう立体的な表現だと、何を伝えたかったのか理解しやすい。これって現代でいうと、人気小説のドラマ化みたいなものか?織田信長が愛した「敦盛」も、背景(平家物語の…

「西行 魂の旅路」

出家したのに未練タラタラな歌も多くて、どこか人間臭い人だったんだなあ。吉野の桜の歌は読んでるだけでも、その情景が伝わってきて、色合いも桜色と雪の白色がマッチして美しく感じる。 『吉野山 桜が枝に 雪散りて 花遅げなる 年にもあるかな』 西行 魂の…

池澤夏樹「南の島のティオ」

河出書房の文学全集シリーズでお馴染み池澤夏樹の作品。大人も読むことのできる児童文学。不思議の島の不思議だけど、ちょっと心に染みる短編集。海(故郷?)に帰っていく日本軍兵士たちの話なんかもそうだけど、戦争の爪痕が所々で登場するけど、重苦しさは…

「伊勢物語」

色好み、今でいえばプレーボーイとかスケコマシの鑑かと思ったのは、恋心を抱かない相手にも優しくできる姿。等しく心を砕くって、なかなか出来ないけど、だからこそ、そんな「男」がモテるのね。そんな彼でも藤原高子との逃避行失敗は辛い思い出なんだろう…

菅原孝標女「更級日記」

都に行きたいばかりに、等身大の仏像を造る(江國訳では、人に造らせているけど)少女期と、大人になるにつれてドンドン後悔していく様とのギャップが読んでいて辛い。若い頃に、もっと◯◯していれば、という後悔は、今の世にも通じるけれど、この人の場合は、…

山岡荘八「柳生石舟斎」

前半は上泉秀綱、後半は息子に持ってかれて、主人公の活躍が見られなかったのが残念。でも、この時代の剣豪と呼ばれた人たちと、戦国武将たちの関わり合いが見て取れて面白い。ていうか、細川藤孝が相変わらず完璧超人すぎる。なんとなく年配の方が好きそう…

葉室麟「冬姫」

「刀伊入冦」でも感じたけど、葉室麟って結構ファンタジー入ってるよね? もう葉室ファンタジーですよ、まったく。主題の女いくさはさて置き、主人公の冬姫がまた可憐なのにも関わらず大そうな完璧超人なのです。この物語で僕が最も印象的だった人物は帰蝶の…

ヘレーン・ハンフ「チャリング・クロス街84番地」

この季節には毎年読みたくなる、まさに『書物を愛する人のための本』。(と言いつつ、この数年、読み直してないけど…) ある女性と書店員との手紙のやり取りだが、なんか微笑ましくも、羨ましくもなる作品♪ 読書好きの皆さんには是非読んでもらいたい一冊! チ…

鴨長明「方丈記」

思ったより淡々とした日記。主観で書かれた「徒然草」と、客観で書かれた「方丈記」。両極端な二冊を同時に読むと、その違いから気付くこともある。例えば、客観的に書いたからこそ伝わる災害の恐怖。喉元すぎれば何とやらではないけど、忘れないように心に…

藤原道長「御堂関白記」

子供の頃に伝記で読んだ藤原道長といえば、平安時代のスーパースター。でも、大人になるに連れ、その人となりを知ると権力争いの勝者、腹黒い政治家のイメージが強い。もっとも、この日記は淡白でそのイメージには程遠く。というか、道長って意外とおバカさ…

司馬遼太郎「馬上少年に過ぐ」

題名は伊達政宗の書いた詩より。短編それぞれの登場人物に『味』があるけれど、歴史に埋もれた人物ばかり。(政宗は別だけど)才能があっても活かしきれない。それなりに高い能力を持っていても、それに見合う場がなければ成功できない。まさに「英雄というの…

吉田兼好「徒然草」

今でいえば、アルファブロガーみたいなもんだ。結構、辛口の言いたい放題だけど、本人もまさか700年後の世でも読まれてるなんて思わなかったろうね。 徒然草 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 (角川ソフィア文庫) 作者: 角川書店 出版社/メーカー: KADOK…