魚編に虎と書いて鯱と読む!!

名古屋で読書会サークルを主催しています。読書の話を中心に徒然と書きます。グランパスが大好き。本職は公認情報システム監査人やってます。

歴読!

鴨長明「方丈記」

思ったより淡々とした日記。主観で書かれた「徒然草」と、客観で書かれた「方丈記」。両極端な二冊を同時に読むと、その違いから気付くこともある。例えば、客観的に書いたからこそ伝わる災害の恐怖。喉元すぎれば何とやらではないけど、忘れないように心に…

藤原道長「御堂関白記」

子供の頃に伝記で読んだ藤原道長といえば、平安時代のスーパースター。でも、大人になるに連れ、その人となりを知ると権力争いの勝者、腹黒い政治家のイメージが強い。もっとも、この日記は淡白でそのイメージには程遠く。というか、道長って意外とおバカさ…

司馬遼太郎「馬上少年に過ぐ」

題名は伊達政宗の書いた詩より。短編それぞれの登場人物に『味』があるけれど、歴史に埋もれた人物ばかり。(政宗は別だけど)才能があっても活かしきれない。それなりに高い能力を持っていても、それに見合う場がなければ成功できない。まさに「英雄というの…

吉田兼好「徒然草」

今でいえば、アルファブロガーみたいなもんだ。結構、辛口の言いたい放題だけど、本人もまさか700年後の世でも読まれてるなんて思わなかったろうね。 徒然草 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 (角川ソフィア文庫) 作者: 角川書店 出版社/メーカー: KADOK…

司馬遼太郎「梟の城」

僕が主宰する歴史読書会「歴読!」の記念すべき第1回(2010年09月)の課題本。なぜ、この本を課題本に選んだかは、司馬遼太郎のデビュー作だったからという単純な理由で、今思うと、最初にどれだけ人が集まるか図りたかった部分もあったかも。 物語の方は娯楽…

勝海舟「氷川清話」

僕の中では勝海舟といえば、「新選組!」の野田秀樹さん一択。チャキチャキの江戸っ子、ってのは、こんな人なのかなあ?なので、この「氷川清話」を読んでても野田秀樹演じる勝海舟が語りかけてくる感じです。結構、辛辣なことも書いてますが、江戸城無血開…

夏目漱石「三四郎」

いやあ、僕も今まで色々な恋愛経験ありましたよ。そりゃあ、人様には話せないような残念な経験も。で、人によっちゃ賛否両論あるのは分かりますが、なーにがストレイシープだ、この野郎!バッカじゃないの、と言いたいわけです、それだけです。はい。 樋口一…

三谷幸喜「清須会議」

三谷幸喜のオタク気質は半端ない。半端ないからこそ「真田丸」や「新選組!」といった名作が生まれたのだ。「清須会議」もそのオタク気質から生まれた訳で、柴田勝家に丹羽長秀、池田恒興をここまで掘り下げて描いた作品が他にあったか?それにしても、織田…

「竹取物語」

日本人なら誰もが知っている「かぐや姫」の原作。でも雰囲気が少し違う。作者不明とあるがゆえ政治批判の匂いもプンプンとするし。 帝の登場あたりから、姫の心情が変わりつつあるのがよく分かる。一人の少女が「真の愛とは何か」を知り、大人の女性に成長し…

紀貫之「土佐日記」

55日間のうち、1日も欠かすことなく記録する継続性は素晴らしいけど、なかには、一文で終わる日もあるので何とも言えない。そもそも日記と言いつつも、あとから「日記調」にしたのではないだろうか。貫之の狙いは『日記という形を借りて、ひらがなによる新し…

「平家物語」

あらためて読み直すと、平家物語は平家(の鎮魂)のための物語だという事がよく分かる。一族終焉の姿は切なく、涙を誘う。 というか、判官贔屓とか言われるけど、義経って結構ズルいしセコイし、パワハラ上司だよね! 平家物語 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・…

藤沢周平「秘太刀馬の骨」

もうタイトルからして、なんか根拠は無いけど凄そうなんですが、とにかく暴れ回る銀次郎(ノット主人公)に圧倒されっ放し。同じ藤沢作品「蟬しぐれ」のストイックな文四郎とは大違い。ドラマでは同じ内野聖陽が演じてるとはとても思えない(笑)。結局のところ…

北方謙三「波王の秋」

北方太平記シリーズの最後を締め飾る作品。海に生きる漢たちの生き様に熱き血潮が燃え滾る。小四郎か海嶺宮のどちらかは兼良親王の血を引いてるのでは、と思いながら読み進めた。一方で、ここで藤原純友の子孫として、群一族を登場させるとは!なんにしても…

ヴィクトール・E・フランクル「夜と霧」

かつて、人生最悪の時を乗り越えられたのは「自分が、今、何をすべきか」ということに気付いたからではないか。一言で言えば、「志」みたいな。 この世に生を受けたからには、人にはそれぞれの使命が与えられ、己の志をもって果たす。 当時、「夜と霧」は読…

鈴木輝一郎「信長と信忠」

偉大なる父・信長にコンプレックスを抱く息子・信忠を想像していたら、見事なまでに予想を裏切られた。嫉妬をしていたのは父・信長だった。母から愛されず、弟に裏切られ、そして最愛の妹まで敵に回した孤独な信長が、才能溢れる優等生タイプの息子に嫉妬す…

司馬遼太郎「王城の護衛者」

幕末において、もっとも勤王思想が強く、孝明天皇への忠誠が厚かった松平容保が瞬く間に逆賊扱いされるのは、まったくもって皮肉としか言いようがない。では、もし自分が容保の立場だったら? 同じ判断をして、同じ結果に終わっていたかも。なんとなく性格似…

高殿円「剣と紅」

大河ドラマ「おんな城主直虎」と同じく、井伊直虎を主人公とした作品。両作品で対照的な点はいくつもあるけど、共通なのは直虎と小野政次の微妙な関係性。そして、敢えて憎まれ役を演じる政次は確かに見ていて切ない。大河の直虎とは異なって、少しクールな…

内村鑑三「代表的日本人」

紹介された5人は揃って、世のため、人のためなら命を投げ捨てる聖人君子のように書かれているが、実際はどうだったのだろう。どことなくキリスト教の殉教者みたいに書かれている気もした。 内村鑑三自身の信じていたキリスト教が堕落していることに対する嘆…

柳田国男「遠野物語」

『山の民』について、もう少し深く触れると思ったら、そうでもなく、不思議なモノに終始してる感じ。けど、日本中で同じような話が伝承されてるんだろうなあ。それには当然、似たり寄ったりの共通点もあって。もっと言えば、世界中に広がってるのかも。 遠野…

新渡戸稲造「武士道」

武士道とは我が国に古来より伝わり、我が国で生まれた唯一無二の民族精神であり、また道徳観念なのではないかと思う。欧米諸国のキリスト教配下による宗教教育との比較は様々な場面で興味深く感じる。 武士道 (岩波文庫 青118-1) 作者: 新渡戸稲造,矢内原忠…

「近松門左衛門」

とにかく登場人物を殺しすぎ。一つには、死んで来世での幸せに期待する、ということ。もう一つは主要人物の死が観客の同情を誘うこともあったのだろうけど。とは言っても、原文のリズム感や「間」の取り方は素晴らしい。 近松門左衛門 『曽根崎心中』『けい…

北方謙三「破軍の星」

二十一歳の若さで散っていった北畠顕家の閃光のような生涯。それでいて洗練され、かつ力強さも感じる。敗れていくことが分かっていても、己の信念、そして夢へ向かっていく顕家の姿には心が熱く奮える。夢、誇り、志とは何であるか、人が生きていく上で大切…

紫式部「紫式部日記」

鬱屈した書き出しは、イメージした紫式部とは程遠く、意外と謙虚というか、しおらしいと思ったのだけど、、、「三才女批評」を読んで納得。このイメージだ(笑)。ただ清少納言に対しては、政治色を感じるというか、道長派としての姿を感じる。 紫式部日記 ビ…

魯迅「故郷/阿Q正伝」

阿Q正伝を数年振りに読んだけど、最後、こんな終わり方だったかなと疑ってしまうくらい、後味が悪かった。 反対に、故郷のラストフレーズは何度読んでも、本当に素敵な文章だと思う。 - 希望とは本来あるとも言えないし、ないとも言えない。これはちょうど…

三島由紀夫「潮騒」

三島のクセに、爽やか青春物語じゃないか!金閣寺と打って変わって、清々しくもあり引き込まれて、一気に読み終えた。無口で不器用、でもマジメで純情な主人公。ラストは想い人と結ばれるハッピーエンド。正直というか誠実こそ報われる。 とにかく、蜂さんG…

岡倉天心「茶の本」

天心が訴えたかったのは、単に「お茶」が素晴らしいということではなく、「他者との共生」「自然との共生」であるということ。でも、エコロジーの先取りというのは言い過ぎでは?それはさて置き、一杯のお茶でも啜ろうではないか。 新訳・茶の本―ビギナーズ…

E.H.カー「歴史とは何か」

「歴史とは何か」というより「歴史家とは何か」。我々が目にする「歴史」をどのようにまとめているかが描かれている気がした。歴史家は、ただ事実を列挙するのではなく、判断を持って取り上げなければならない。 なぜ、人々は歴史が好きなのか、歴史を振り返…

曲亭馬琴「南総里見八犬伝」

これだけ男子の少年心をくすぐる作品は古今東西探しても数少ないだろう。分かりやすいくらい、悪者が痛い目に遭い、正しい者が報われる。単純な構図だけど、疲れてる時には心地よい。しかし、信乃の元・主人公っぷりが哀しい。すべて親兵衛に持ってかれたね…

藤沢周平「蝉しぐれ」

幼な馴染みとの淡い恋、友情、家族に訪れる悲劇、相次ぐ逆境を乗り越え、絶体絶命のピンチの中、かつての想い人を助け、巨悪に一矢を報いる。まさに漢にとって最高に燃えるシチュエーションではないか!一方で一青窈の「かざぐるま」がピッタリくる切ない恋…

早見俊「うつけ世に立つ」

僕が生まれ育った岐阜の街を描いた作品。とは言っても450年前のお話だけど。 織田信長の文化人としての側面として、落語の祖とも言われる安楽庵策伝や鵜匠たちとの交流を描いており、今までの作品とは違う信長像が新鮮。 また、残酷にも見える行為の裏で思い…